官製ワーキングプア 自治体の非正規雇用と民間委託(布施哲也)
今年出た似たタイトルの本に『官製ワーキングプアを生んだ公共サービス「改革」』がある。そっちは図書館に入っていたのだが、こっちは入っていなかった。この選書の理由は不明だが、近所の図書館に所蔵のないこっちの本をリクエストしたら、他市からの相互貸借本で届いた。
数年前に「指定管理者制度」というのが導入されて以来、公共施設の運営は、それまで地方公共団体や外郭団体(役所がほとんど出資してつくった財団など)しかできなかったのが、株式会社やNPOを含め、民間もオッケーということになった。
役所の直営であっても、多くの公共施設、そして役所の窓口、その他公共の仕事を担う職場では、いわゆる非正規職員(嘱託とか臨職とかパートとかアルバイトとか、呼び名や働く時間はいろいろだが、正規職員とかなりの待遇差がある)がたくさん働いている。
「指定管理者制度」を導入している自治体は多い。そこでも、直営の頃と同じかそれよりもっと悪い条件で働く非正規の人たちがたくさんいる。
この制度を導入するメリットは、「役所が運営するよりもサービスがよくなる=利用者にとってよくなる」ということと「運営にかかるお金を節約できる」ということの2点が主にあげられている。お金の節約=人件費の節約は、当然といえば当然のことなのかもしれない。
なんで役所のほうがサービスよくできないねん?と素朴にツッコミたい。
役所がやるより、ヨソの団体がやったほうがサービスがよくなり、お金も節約できる。それを認めてもいい。ただし、こうツッコミたい。
じゃ、その施設を公共のものとして維持する意味は?
公共のものに、なるべくお金をかけないのがヨイと考えるココロは何なのか?
公共のものがなるべく小さくてヨイというならば、究極的には役所はいらない。
役人とは、パブリック(公の)サーバント(しもべ)という名のとおり、公のためにサービスする人たちではないの? ヨソに預けたほうがサービスがよくなるならば、お役人たちは、このあと何のために仕事をするのか?
そういう疑問がいつもふつふつと湧く。
この本には、私の住む自治体でも思いあたるような話がいろいろと載っている。
コミュニティ図書室の運営に指定管理者制度を取り入れるので、それまで10年ほど働いてきた非常勤の人たちが辞めてほしいと言われ、このまま働かせてほしいと訴えたときの話。
▼「図書室の運営委員会にも協力を求めましたが、みなさんあまり関心がなく、私たちの言うことより、市職員の説明を信じていました」
利用者の理解を求めるのが大事と、市は、地域住民への説明会を開く。この種の説明会は、そこで住民の意見を聞いて、その意見を行政に生かすのではと思いがちだが、そんなことはない。市の当初の方針はあくまでも変えないで、反対意見のガス抜きの場となる。(pp.26-28)
民間委託された場合により一層ひどくなる人件費の削減。
▼民間委託後に残された問題は、民間企業が、そこで働く社員をどう処遇するかになる。
はっきりしていることは、自治体が企業に支払う委託料は、それまでの市職員に支払われていた人件費の総額以下となることだ。遠い将来が、どうなるかは知りえようがないが、民間委託後の数年間は、民間委託をする目的が経費削減なのだから人件費は当然削減される。では、民間企業の社員の具体的な人件費はとなると、委託料に企業の利益分を上乗せするのだから、当然のことだが、これまで働いていた自治体職員、それも嘱託・臨時職員以下ということになる。そして、民間企業の社員の構成はというと、一部の基幹社員は正社員だが、ほとんどはパート社員で、なかには責任者もパート社員であったりする。(p.149)
公共施設の運営に指定管理者制度を導入し、役所が直営でやるのではなく、ヨソの団体や民間へ仕事をまかせる。それによって管理・運営の責任の所在があいまいになり、議会や市民のチェックも届きにくくなることは、役所にとってメリットなのだろうか?もしもそういうココロで指定管理者制度が導入されているとしたら、それこそ「公共施設って何?」である。
▼[施設の管理・運営の]第一義的責任は自治体にあるが、二義的な責任は、指定管理者が持つことになる。そのことは、第三者への損害賠償責任が生じた場合に自治体の責任のあり方が違ってくる。賠償責任を負う自治体は、その賠償を、そのまま指定管理者に求めることも可能となるからだ。…(中略)…
もう一つの効果は、自治体議会との関係にある。議会が執行機関へのチェックが働く場合が前提となるが、施設の管理を指定管理者へ委託してしまうと、議会の直接的なチェックは不可能となることだ。自治体にとっても望むところとなる。その結果は、その施設で働く人の労働条件をはじめとした内部的部分は、すべて指定管理者の裁量にまかされることとなる。…(中略)…この指定管理者制度も一部事務組合と同じように、その自治体議会と市民の監視は緩くなる。(pp.153-155)
著者は清瀬市議会議員だそうである。
この本、かなり急いでつくられたようで、春に尼崎であった労働争議のことも載っている。
公の仕事とは何なのか?
公共施設は、どういうものなのか?
安ければいいのか?
少々読みづらい部分もあるし、どうもよくわからないところもあるが、収めた税金がどのように使われるのが望ましいのか、「みんなのための仕事」として役人にまかせることは何なのか、住んでいる者が自分たちでできることは何なのか…そんなことを考えながら読んだ。
自治体というコトバに入っている「自治」、これをどうやっていくかが問題なのだと思う。
★このブログのamazonリンクから本を買っていただいた場合にもらえる規定の額を、『We』発行資金としてカンパします。よろしくお願いします。
数年前に「指定管理者制度」というのが導入されて以来、公共施設の運営は、それまで地方公共団体や外郭団体(役所がほとんど出資してつくった財団など)しかできなかったのが、株式会社やNPOを含め、民間もオッケーということになった。
役所の直営であっても、多くの公共施設、そして役所の窓口、その他公共の仕事を担う職場では、いわゆる非正規職員(嘱託とか臨職とかパートとかアルバイトとか、呼び名や働く時間はいろいろだが、正規職員とかなりの待遇差がある)がたくさん働いている。
「指定管理者制度」を導入している自治体は多い。そこでも、直営の頃と同じかそれよりもっと悪い条件で働く非正規の人たちがたくさんいる。
この制度を導入するメリットは、「役所が運営するよりもサービスがよくなる=利用者にとってよくなる」ということと「運営にかかるお金を節約できる」ということの2点が主にあげられている。お金の節約=人件費の節約は、当然といえば当然のことなのかもしれない。
なんで役所のほうがサービスよくできないねん?と素朴にツッコミたい。
役所がやるより、ヨソの団体がやったほうがサービスがよくなり、お金も節約できる。それを認めてもいい。ただし、こうツッコミたい。
じゃ、その施設を公共のものとして維持する意味は?
公共のものに、なるべくお金をかけないのがヨイと考えるココロは何なのか?
公共のものがなるべく小さくてヨイというならば、究極的には役所はいらない。
役人とは、パブリック(公の)サーバント(しもべ)という名のとおり、公のためにサービスする人たちではないの? ヨソに預けたほうがサービスがよくなるならば、お役人たちは、このあと何のために仕事をするのか?
そういう疑問がいつもふつふつと湧く。
この本には、私の住む自治体でも思いあたるような話がいろいろと載っている。
コミュニティ図書室の運営に指定管理者制度を取り入れるので、それまで10年ほど働いてきた非常勤の人たちが辞めてほしいと言われ、このまま働かせてほしいと訴えたときの話。
▼「図書室の運営委員会にも協力を求めましたが、みなさんあまり関心がなく、私たちの言うことより、市職員の説明を信じていました」
利用者の理解を求めるのが大事と、市は、地域住民への説明会を開く。この種の説明会は、そこで住民の意見を聞いて、その意見を行政に生かすのではと思いがちだが、そんなことはない。市の当初の方針はあくまでも変えないで、反対意見のガス抜きの場となる。(pp.26-28)
民間委託された場合により一層ひどくなる人件費の削減。
▼民間委託後に残された問題は、民間企業が、そこで働く社員をどう処遇するかになる。
はっきりしていることは、自治体が企業に支払う委託料は、それまでの市職員に支払われていた人件費の総額以下となることだ。遠い将来が、どうなるかは知りえようがないが、民間委託後の数年間は、民間委託をする目的が経費削減なのだから人件費は当然削減される。では、民間企業の社員の具体的な人件費はとなると、委託料に企業の利益分を上乗せするのだから、当然のことだが、これまで働いていた自治体職員、それも嘱託・臨時職員以下ということになる。そして、民間企業の社員の構成はというと、一部の基幹社員は正社員だが、ほとんどはパート社員で、なかには責任者もパート社員であったりする。(p.149)
公共施設の運営に指定管理者制度を導入し、役所が直営でやるのではなく、ヨソの団体や民間へ仕事をまかせる。それによって管理・運営の責任の所在があいまいになり、議会や市民のチェックも届きにくくなることは、役所にとってメリットなのだろうか?もしもそういうココロで指定管理者制度が導入されているとしたら、それこそ「公共施設って何?」である。
▼[施設の管理・運営の]第一義的責任は自治体にあるが、二義的な責任は、指定管理者が持つことになる。そのことは、第三者への損害賠償責任が生じた場合に自治体の責任のあり方が違ってくる。賠償責任を負う自治体は、その賠償を、そのまま指定管理者に求めることも可能となるからだ。…(中略)…
もう一つの効果は、自治体議会との関係にある。議会が執行機関へのチェックが働く場合が前提となるが、施設の管理を指定管理者へ委託してしまうと、議会の直接的なチェックは不可能となることだ。自治体にとっても望むところとなる。その結果は、その施設で働く人の労働条件をはじめとした内部的部分は、すべて指定管理者の裁量にまかされることとなる。…(中略)…この指定管理者制度も一部事務組合と同じように、その自治体議会と市民の監視は緩くなる。(pp.153-155)
著者は清瀬市議会議員だそうである。
この本、かなり急いでつくられたようで、春に尼崎であった労働争議のことも載っている。
公の仕事とは何なのか?
公共施設は、どういうものなのか?
安ければいいのか?
少々読みづらい部分もあるし、どうもよくわからないところもあるが、収めた税金がどのように使われるのが望ましいのか、「みんなのための仕事」として役人にまかせることは何なのか、住んでいる者が自分たちでできることは何なのか…そんなことを考えながら読んだ。
自治体というコトバに入っている「自治」、これをどうやっていくかが問題なのだと思う。
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